2020/3/8
|
|
自己実現的予言と合成の誤謬 |
|
誤謬 これを ごびゅう と読みます。久しぶりにこの文字をネットで見ました。 意味は、 思考内容と対象との一致しない思惟,判断などをいい,真理の反対語。誤謬は大きく,実質的 (質料的) 誤謬 errorと論理的 (形式的) 誤謬 fallacyとに分けられる。前者は判断がそれに対応する事物に一致しないことをいい,後者は,同一律,矛盾律,排中律などの思考の法則に従わない論理的誤謬 (論理学上では虚偽という) をいう。このような誤謬の原因については,先入見,判断力の不足,思考のエネルギーの不足,集中度や恒常性の不足,認識材料の不足など種々あげられる。心理学的にみれば,誤謬は現象にのみかかわり,その現象が認知させるものにかかわらずに結論を急ぐことをいう。 出典 <cite>ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典</cite> この誤謬についてトイレットペーパーがなくなったデフレをもたらす社会科学的現象を三橋先生が説明しています。 COVID-19アウトブレイクの影響で、店頭からマスク、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、紙オムツなどが消えました。 マスクは分からないでもないですが、なぜトイレットペーパーまでもが無くなってしまったのでしょうか。 国内で流通しているトイレットペーパーは、97%が国産で、中国との交易が途絶しても、品切れになることはありません。 それにもかかわらず、人々が買いだめに走り、結果的に流通(運送サービス)の「供給能力の限界」により、品切れ状態になってしまいました。 1. 自己実現的予言 自己実現的予言とは、はじめの誤った状況認識が、新たな行動を呼び起こし、 その行動により当初の誤った考えを現実化してしまうことです。 今回のケースで言えば、「トイレットペーパーが無くなる」という誤った状況認識により、人々が買いだめに走り、結果的に本当に店頭からトイレットペーパーが無くなった。 見事なまでの自己実現的予言です。 2. 合成の誤謬 人々が「トイレットペーパーが品切れになるかも知れないので、不安を解消するために買いだめしよう」と、ミクロでは合理的な行動をとった。 個々人が「不安を解消するために行動する」ことは、これは確かに合理的です。 結果的に、マクロでトイレットペーパーが品切れになってしまった。 ミクロな合理的行動が合成され、マクロで不都合な結果をもたらす。 まさに、合成の誤謬です。 自己実現的予言や合成の誤謬など、文字情報だけでは難しい印象を与えるデフレの主因が、今、目の前で別の形をとって現実化したわけです。 というわけで、 「日本が経済成長しないと確信し、国内に投資しなかった結果、実際に日本は経済成長しなかった」 「借金返済や預金など、企業や家計の合理的な行動が合成された結果、デフレ継続という非合理な結果をもたらした」 といった「デフレをもたらす社会科学的現象」を説明する際に、是非とも「トイレットペーパー買い占め」の例を活用して下さいませ。 From 三橋貴明
|
|