労務管理とは? 台湾でなぜ労務管理が必要か

労務管理というのは、企業の経営資源であるヒト・モノ・カネの3つの要素のうち、ヒトを対象とするもので、企業が社員に対して行う管理の事を言います。

台湾の労働法は日本とは全く違った物になります。ですので、台湾では台湾法に基づきしっかりとした労務管理を行わなければなりません

 

  人事管理と労務管理の違い


人事管理とは社員の管理で配属、能力評価、教育など、弊社で言う所のHRの概念に当ります。
労務管理とは、企業が企業に対する、社員、管理職労働者に対する法令順守の精神を守り、企業モラールを高め、その対価として生産性の向上、企業価値を一定の水準以上に保つために必要な要素です。

  貴社が台湾で行わなければいけない労務管理の重要性

1・日本と台湾の労務管理の違い

日本企業は、台湾は日本に似ている国なので労務管理の仕方、労働法など日本と同じだと考えている企業様をたくさん見受けます。日本と海外の人事制度、労務管理手法はかなり異なっています。

海外から見ると、日本の企業内教育制度というのは、海外ではかなり異質な存在ですし、中央集権的に君臨する人事部というのも海外からは珍しい存在に見えます。

海外では人材は実力主義、人事は会社の効率と人材が働きやすくするための基幹として捕らえる事が出来ます。

台湾では、採用などは人事部ではなく、現場に関する部署が採用を決める事が一般で、それをサポートするのが人事部の役割になります。これによって本人の希望・現場の希望が一致する事により効率的に部署運営を行う事が可能になります。

日本企業が海外に進出するに当たり、苦労する部分が、この人事制度、労務管理の仕方です。

日本のマネジメント制度を活用することは間違いではありませんが、現地事情を知らずに、1時面接、2時面接、役員面接など、時間をかけすぎていい人材を逃すケースは日常茶飯事です。人材も待ちません。

海外では、人材、物、金の順番で決断を早くしなければなりません

海外に於いては人材、すなわち人が一番大切です。優秀な人材が入れさえすれば、物や金はいくらでも管理できます。物や金がいくらあっても、それを動かす人材がいなければ、海外のスピードにふるい落とされ、経営課題が表面化し、問題が起きます。ですので、台湾では即戦力人材を雇用する事が一般的になっています。

経営効率を上げるには優良な人材に投資をする事です。

 

2・なぜ経営に労務管理が必須なのか?

労務管理には3つの必須ファクターが有ります。

  1. 台湾での文化風習、法律を知った上でのモラールの維持向上
  2. 生産性の向上
  3. コンプライアンス 
下記の循環で会社の維持向上を図ります。

モラールの維持向上➡ 生産性向上➡ コンプライアンス➡ 職場環境向上

(モラール=目標を達成しようとする意欲、態度、勤労意欲、やる気)

台湾の法令を遵守する職場環境を構築し、モラールを高め、社員の能力をフルに発揮させる職場環境を構築し、生産性を向上させる事が重要で、それを一体に形成、循環させる事が台湾での労務管理の秘訣になります。

日本ではKPIが主流です。台湾ではそこにOKRを入れ込む必要が御座います。

3・モラールの維持向上

モラール維持向上に立つ理論がマズローの欲求5段階説です。

5段階の階層を用いて人間の欲求を理論化したもので、人事制度、労務制度構築に必要な理論です。経営者には当然6段階目の力量も必要となります。

マズローの欲求5段階説

 

4・生産性の向上

生産性を上げるには人的資源の確実な実践が不可欠になります。かくして企業内部に於ける仕組みの構築が必要になります。仕組みの構築の中で一番必要な事が企業内の可視化です。会社内部の無駄、そして社員が行っている業務、その流れ、内容を可視化し、それを見極めたうえで人への投資を行い、適正な配置、人材育成に取り組むことが必要です。

その為には労資会議がキーを握る事になります。

5.コンプライアンス(法令遵守)

コンプライアンス=とは、いうまでもなく法令順守の事です。法令順守をすると言う事は、企業に対するリスク管理、リスクヘッジを意味し、業務を順調に進める根幹の事を言います。

私は労務コンサルティングと言う仕事をしていると、新たに台湾に進出してきた企業様が、台湾の労働基準法を全く理解せず、<台湾は日本と同じだろ、似ているだろう><忙しくて手が回らない><まったく気にしていなかった><台湾ってそんなに厳しいの?>など労働法に対する意識の低さと、間違った考え方に基づき日本の労働基準法を翻譯しそのまま台湾の会社に適応しているケースなどに多々遭遇いたします。これは全くの過ちです。

また、既に台湾に進出し業務を営んでいらっしゃる企業様の中にも以前の労務管理方法を永遠と引き継ぎ、法的観念に全く疎くないがしろにしている経営者や、業務を丸ごと社員に投げてしまい、経営者としての法的責務をしっかりと把握していない現状に常に遭遇し続けています。

また、本社の管理機能が高すぎて(低すぎて?)、稟議だ!稟議だ!との言葉を常に耳にし、日本の常識を海外までに当てはめているケースに常に遭遇します。日本の常識は海外では通用しません。日本の常識は世界のスタンダードではありません。ここ台湾では通用しません。

台湾の労働基準法は社員を守る意識が非常に高く、毎年目まぐるしく法律の内容が変化しています。セクハラ法などは昨年、2016年年1月1日、2016年年3月1日、6月、8月、2017年、2018年、2019年、2020年、2021年度も何度も法改正が施されています。2020年度では遂に労働法と民法が連結した労働事件法と言う法律まで出来るようになりました。

2017年度においては労働基準法が大きく改正され、台湾中を巻き込んで多くの論争が起きています。政府から各企業には半年間の改正猶予が与えられ、その後の労働検査は厳しい物になる事が予想されます。と言うか厳しくなります。2018年度にはさらに法解釈が変更となり、早々に企業検査が行われ、多くの企業が労働法違反で指導、罰則を受けています。その後の法改正も年々あり、毎年日系企業が労働局検査で指導を受けている状況を目にしています。

労務管理に一番必要な事は、

ここは台湾です。だから台湾の法規を守らなくてはいけません。

この確たるコンプライアンス遵守精神が必要になります。私は、会う人皆に言い続けています。

「台湾は台湾で有って、日本ではありません。台湾の労働基準法は厳しいので、社内でしっかりと管理してください。もし分からなければ、我々はこの道のプロフェッショナルですのでいくらでもお手伝いさせて頂きます

法的観念がしっかりと行き届いている企業様は、この言葉を受け止めて頂けますが、台湾の法的順守精神にまだ馴染んでいらっしゃらない企業様に限って「はあー、わかってますと言う、なんとも曖昧な返事を頂いています。

労務管理の基本は労働基準法から始まります。労働基準法は強制法規であります。台湾では労働法に民法まで紐付けられています。労働検査員は強力な権限を以って検査に臨みます。労働検査Q&Aにも書きました。違反をすれば当然罰則が有ります。

「備えあれば憂いなし  まずは企業の根底をしっかりと固めましょう。

今の日本の間違った概念で、「憂いなければ備え無しの考えは海外では通用しません

現地に居る物こそが現地の事を知り得ます。日本の本社は現地の事を何も知りません。海外に出向させ日本に戻った社員様から的確な情報を得て頂けましたら幸甚です。投資をしたからには回収しなければなりません。

安保法案の討論を思い出してください。憲法9条に於いて、日本では目くじらを立てて物議を噛まします。しかし、、海外では日本の憲法9条を誰が知っているのでしょうか? 台湾の憲法9条を知っていますか?  それと同じ理論です。

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