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就業における台湾労働者権益

  
2025/11/15日の労働局からのニュースです。
 

就業差別禁止の精神と国際貿易との関係  王如玄 弁護士

労働とは、経済発展や社会保障、性別平等、人権保護に深く関係するテーマであり、また民族・領域・国家を超えた価値選択に関わる問題でもある。

時代ごとに労働のあり方は変遷してきた。
漁猟時代には自給自足で雇用関係はなく、労働条件という概念も存在しなかった。
農業時代に入ると、土地所有者による奴隷労働や雇用が見られたが、当時は基本的人権が尊重されていなかった。
工業革命以降、機械化と工場制度の誕生により構造が一変し、大量生産が進む中で労働者の条件は悪化、工員の組織化やストライキが生まれ、国家による労働法制の必要性が主張され始めた。

現代化以降は、大規模企業と明確な人事規定、長期的雇用、サービス業の拡大、知識集約型産業への移行が進んだ。
さらにグローバル化により、産業の移転・国際分業が急速に進行し、企業は雇用の柔軟性を求め、非正規雇用が増え、労働者の尊厳をどう守るかが大きな課題となった。

ILO(国際労働機関)は「ディーセント・ワーク(尊厳ある労働)」を掲げ、

  1. 労働者の権利

  2. 雇用

  3. 社会保障

  4. 社会対話
    の4戦略を提示している。労働の形態・時間・場所などに関わらず、普遍的に保護されるべき権利である。

国際的な労働人権の制度は、1948年の世界人権宣言、1966年の「国際人権規約」2公約、1979年の女性差別撤廃条約(CEDAW)などを基礎とする。
特にILOが1998年の第86回総会で採択した「労働における基本原則および権利に関する宣言」は

  1. 強制労働の撤廃

  2. 結社の自由・団体交渉権

  3. 雇用・職業上の差別撤廃

  4. 児童労働の廃止
    を核心価値に据えている。台湾も2009年に2公約を国内法化し、2012年にCEDAWを国内法化している。

2025年9月24日、台湾企業・巨大(ジャイアント)が「強制労働」に関与している疑いにより、米国税関・国境警備局(CBP)が輸入禁止命令(WRO)を出した事件は、国際労働基準の重要性を示す代表例である。
CBPは「強制労働によりコストを不当に下げ、米国企業に損害を与えた」と指摘し、台湾製自転車の輸入が直ちに停止され、巨額の損失が発生した。国際労働基準の遵守が企業存続に直結することが明らかとなった。

同様に、就業差別禁止も国際労働基準の核心である。
個人の特性に基づく偏見は人間に存在するが、それが職務能力と必ずしも関係するわけではない。仕事と無関係の属性を理由に差別することは法律で認められない。

台湾の就業サービス法第5条は、
人種、階級、言語、思想、宗教、政党、出身地、出生地、性別、性的指向、年齢、婚姻、容貌、顔立ち、障害、星座、血液型、過去の労働組合員身分
という18項目を理由とする差別を禁止している。
違反すれば30万〜150万元の罰金であり、職場いじめにも該当する場合は雇主に対処義務が生じる。

台湾企業は労働人権への理解が十分とは言えず、これは企業経営上の重大なリスクである。天然資源が少なく貿易依存度の高い台湾こそ、国際労働基準を遵守する必要がある。巨大の事例は深刻な教訓であり、企業は慎重に対応しなければならない。