台湾労働法における賃金・残業代・諸手当の完全ガイド |
1. はじめに:台湾における賃金管理の重要性
台湾における労資争議の最大の原因は「賃金・手当」に関連するものです。
労働者の権利意識が非常に高く、労働者からSNSや労働局を通じた通報が一般的であるため、企業側には法的根拠に基づいた正確な支払いが求められます。
本記事では、2026年の最新改正内容を含め、企業が必ず押さえておくべき賃金・手当のルールを詳説します。
2. 【2026年最新】最低賃金の改定とその影響
台湾政府は「最低工資法」に基づき、物価上昇を反映した最低賃金の引き上げを継続しています。
2026年1月1日からの新基準:
月給: 29,500元(旧:28,590元から約3.1%増)
時給: 196元(旧:190元から約3.1%増)
実務上の注意点:
最低賃金の引き上げは、単に「月給を上げる」だけでは済みません。これに伴い、「労働保険」「健康保険」「退職金拠出金」の等級表が改定されます。全ての従業員について、給与額が新しい等級のどの区分に該当するかを再確認し、控除額や会社負担分を調整する必要があります。
3. 日本人が間違いやすい「残業代(加班費)」の複雑な計算
台湾の残業代計算は、出勤する「日の属性」によって倍率が劇的に変わります。ここを間違えると、後の労働検査で多額の罰金と遡及支払いを命じられるリスクがあります。
通常勤務日の残業:
最初の2時間:1.34倍(1 + 1/3)
次の2時間:1.67倍(1 + 2/3)
- 労働は12時間を超えてはなりません。
休息日(一週間に一回の法定外休日、通常は土曜、シフト制は会社による):
最初の2時間:1.34倍
次の6時間:1.67倍
※2018年の改正により、実労働時間での計算が原則となりました。
例日(一週間に一回の強制休日)および国定休日:
原則として労働禁止ですが、天災や緊急事態で出勤させた場合、「8時間以内であっても1日分の賃金」を追加で支払う必要があります(休日出勤手当)。
4. 台湾独自の「休暇に伴う給与支払い」ルール
日本にはない「法定休暇中の給与支払い義務」が、台湾のコスト管理において重要なポイントとなります。
普通傷病假(病気休暇):
年間30日(入院しない場合)まで認められ、企業はその期間の給与の50%を支払う義務があります。診断書の提出を求めることは可能ですが、支払いを拒否することはできません。
事假(私用欠勤):
年間14日まで。無給で構いませんが、欠勤を理由にした皆勤手当の全額カットには慎重な判断が必要です。
特別休假(有給休暇):
台湾では半年勤務で3日付与されます。年度末に消化しきれなかった有休は、原則として「現金での買い取り(賃金換算して支給)」が義務付けられています。
5. 賞与と諸手当:皆勤手当と端午・中秋・年終(旧正月ボーナス)
台湾の賃金構成には、基本給以外に以下の要素が含まれるのが一般的です。
皆勤手当(全勤獎金): 台湾では一般的ですが、これは「賃金」の一部とみなされます。そのため、残業代を計算する際の「時給単価(平日毎時工資)」の算出根拠に含めなければならない点に注意してください。
三大節(端午・中秋・年終奨金):
端午節と中秋節には、数千元のギフト券や現金を支給する習慣があります。
年終奨金(旧正月ボーナス)は、多くの企業が1ヶ月〜数ヶ月分を支給します。法律上の義務ではありませんが、就業規則に「支給する」と明記している場合は、法的な支払い義務が生じます。
6. 社会保険と退職金:会社負担コストの見積もり
給与額を決定する際、企業側は額面給与に加えて約15%〜20%以上の付随コストを見込む必要があります。
労働保険(労保): 会社負担は約70%。
健康保険(健保): 会社負担は約60%。
退職金(労退): 会社は月給の6%以上を労働者の個人口座に拠出する義務があります(新制退職金制度)。これは従業員の給与から天引きするのではなく、会社が別途負担(国庫へ強制支払い)するものです。
7. まとめ:コンプライアンス遵守のために
台湾の労働局は、定期的な「労働検査(労検)」を行っています。特に賃金台帳の不備や残業代の計算ミスは、1件あたり2万元〜100万元の罰金対象となります。
チェックリスト:
[ ] 2026年1月からの給与が29,500元(月給)を下回っていないか?
[ ] 残業代の算出根拠に「皆勤手当」や「職務手当」が含まれているか?
[ ] 有給休暇の未消化分を適切に買い取っているか?
[ ] 病気休暇の給与半減支給が正しく計算されているか?



